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最高裁判所第一小法廷 昭和33年(あ)1837号 判決

主文

被告人許鐘烈に対する原判決を破棄し、同被告人に対する本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

被告人趙よう九、同姜仁錫に対する本件上告を棄却する。

理由

大阪高等検察庁検事長代理次席検事井嶋磐根の上告趣意第一点について。

しかし、所論引用の当裁判所大法廷判決(判例集一〇巻六号九二一頁以下)は、いわゆる火焔瓶に関するものであって、火焔瓶とその構造、装置、薬品資材の性質分量、使用方法、並びに、性能ことに破壊力等において異なるいわゆるラムネ弾に関する本件に適切でないし、また、該判決は、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物一般の意義についての判例であって、その破壊力の程度、可能性等に関しては何等判示していないのであり、従って、原判決は、その点において必ずしも該判例と相反する判断をしたものともいえない。それ故、所論は、採ることができない。

同第二点について。

原判決が爆発物取締罰則にいわゆる爆発物の意義に関し所論第一点摘示のごとくことに「その破壊力が極めて高度であって公共の安全をみだし、又は人の身体財産を害するに当り、甚大な危害を与える可能性の大なるものを指称するのである。」と判示したこと、並びに、本件ラムネ弾の構造性能等に関し同点摘示のごとく認定して本件ラムネ弾は爆発物に当らないとしたことは、所論のとおりであり、また、所論引用の各高等裁判所の判決が所論の日時同爆発物の意義に関し所論摘示のごとく判示し、所論摘示の各ラムネ弾が、いずれも、該爆発物に該当する旨判示したことは、すべて、所論のとおりである。されば、原判決は、右各高等裁判所の判例と相反する判断をしたものというべく、当裁判所は右の各高等裁判所の判例を正当と思料するから(なお、所論引用の(1)の判決を是認した昭和三〇年(あ)二〇九一号同三四年五月七日言渡当法廷判決参照。同(2)の判決を是認した昭和三〇年(あ)第二〇四三号同三三年一〇月一四日言渡第三小法廷判決判例集一二巻一四号三二六四頁以下参照。同(4)の判決を是認した昭和三〇年(あ)三九三六号同三三年一二月一五日言渡第三小法廷判決参照。同(5)の判決を是認した昭和三三年(あ)三七一号同三四年五月七日言渡当法廷判決参照。)、原判決(但し後記のごとく被告人許鐘烈のみに関する部分)は、刑訴四一〇条一項、四〇五条三号により破棄を免れない。

同第三点について。

原判決が、所論摘示のごとく結局本件ラムネ弾は、水が注入または少くとも手許に準備されていない間はいわゆる爆発物に当らない旨判示したこと、また、名古屋高等裁判所金沢支部が既に昭和三〇年九月二七日所論摘示のごとく結局カーバイドだけをラムネ瓶に入れたものでも爆発物に当る旨判示したことは所論のとおりである。されば、原判決は、右金沢支部の判例と相反する判断をしたるものというべく、当裁判所は、右金沢支部の判例を正当と思料するから、原判決の被告人許鐘烈に関する部分は、この点でも同第二点に判示したとおり破棄を免れないものと考える。

以上の理由により、本件ラムネ弾に関係のある被告人許鐘烈に対する上告は、その理由があるから、刑訴四〇五条三号、四一〇条一項、四一三条により主文一項のとおり判決すべきであるが、被告人趙よう九、同姜仁錫は、本件ラムネ弾に関係のないこと明らかであって、同被告人らに対する本件上告はその理由がないから、刑訴四一四条、三九六条により主文二項のとおり判決すべく、裁判官の全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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